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アメリカの一部の州では、未成年でも死刑判決が下る。
ジェーンは、十七歳の時に通っていた高校の教室で発煙筒と消火器で煙をまき散らし、逃げ惑う生徒たちと教師を父親の銃で一人一人射殺した。被害者数、十八名。撃ち損じた者はいなかった。
事件当時、教室の扉は開かないように細工されており、クラスメイトの人数かける五発ずつ用意された弾丸。そして、事件までの数か月、父親と週末に射撃場で訓練を重ねていたことが決定打となり、彼女は未成年ながら第一級殺人罪での死刑を言い渡された。
彼女は、五フィート八インチと女性としては身長がやや高く肥満体の大柄で、ライトブラウンの髪をしており、クリクリとしたダークブラウンの瞳は遠視メガネによってより一層大きく誇張され、巨大な熊のぬいぐるみのようだ。
拘置所に収監されて十年。事件当時、新聞に載った彼女とさほど外見は変わっていない。
オレンジ色の服を着た彼女が椅子に座る。そして、分厚いガラスの向こうで彼女は受話器を取った。僕はインタビュー受諾の御礼とともに自己紹介をする。
「上訴はされないと伺いました」
「はい」
「そうですか。事前の手紙でも書かせていただきましたが、僕は貴女がなぜあの犯罪を犯したのかを知りたく思っています。少しずつでも教えてください」
ジェーンは肉の詰まった首を傾け、少し斜め上を見つめた。高校時代に意識を戻しているようだ。
「そうですね。ちょうどあの頃に公開された映画で、人間のように動いて喋る熊のぬいぐるみのキャラクターがいたんです。それに私が似てたみたいで、あだ名が『テッド』になりました」
彼女は懐かしむように微笑みを浮かべる。
「みんな『テッドに似ててカワイイ』と言ってくれました」
それから、ジェーンは急に生気のない人形のような顔になって続けた。
「だから、私、テッド・バンディみたく、みんなをぶち殺してやろうと思ったんです」
(了)
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