嘘の人生謳歌

3/7
前へ
/7ページ
次へ
「っつーかさあ。そんなイベント一回もやったことないのにいきなりやるわけないじゃん。どんだけ自分の都合のいい捉え方してんのかね。そういう自己中なところがマジで嫌いだったんだけど」  嫌い。  別れた当日にこの写真。ずっと前からこの男と付き合ってたんだ。僕の前では見たことのない満面の笑顔だった。その後も続く会話の中で何度も出た言葉。 「つまらない奴」  真面目、おとなしい、そんなふうに言われてきた人生だった。でもそれって、何もない。つまらない、価値がないってことだとこのとき気づいた。「別にいてもいなくても同じ」と言われていた。  刺激が欲しい。つまらない奴だと思われたくない。楽しいことを、対話を、コミュニケーションを。  それを欲して、突っ走って、迷走して。  それまで僕を支えてくれていた人は離れ、新たな友人ができるわけでもなく。僕は孤独の中で生きた。何かをすればするほど空回って。  アルコール漬けの毎日となって体を壊して。支えてくれる、そばにいる人が一人もいない中一人で終わった。  それを思い出した。思い出してしまった。吐いた、泣いた、のたうちまわった。  なんで。生まれ変われば幸せになってもいいじゃないか。頑張ったよ、僕は。なんで、常識も何もかも違うところでさえ僕は同じ目にあってるんだ。どうして。 何の意味があるの? お前になんの価値があるの? 自分の考え押し付けてるだけじゃん。 お前が一人でやればいい。わたしたちがやる必要ない。 必要ない。 “お前は必要ない”  正直に生きるってどういうことだっけ、何をしてどうするのが正直? わからない、わからなくなって怖くなった。この世界では正直に生きたら、こんなにも生きづらいのに?  そうだ、今日はエイプリルフール。嘘をついていい日だ。何をやっても許される。この世界のルールにのっとって、それが不満だとしても僕は嘘をつくことが許されているんだ。  お昼には、嘘は無効? 知らないね。彼女だって嘘だよって言わなかったじゃないか。知らない。  自分を守るための手段だったはずだ、こうすれば楽になると。嘘だから、こんなの本当じゃないから。だから楽しめ、嘘を。冗談を笑い飛ばす四月の馬鹿になればいい。  楽になると思ったんだ。  そんなことなかった。つらすぎだ。やればやるほど虚しくて。やっぱり僕はこの世界に馴染めない。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加