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友達になってください、なんてわざわざ言うのはこの世界ではありえないことだ。友達という概念がないから。
「嘘ついていい日は僕の特権ね。僕がやるぞって言った日にやるから」
「次はいつ」
「明日」
「じゃ、明日来る。その次は」
「明後日かな」
「じゃあ明後日も来る」
そう言うと二人で空を眺めた。刺激はなくてもいいけど、息抜きぐらいはあってもいいんだな。
たった一日の午前中だけ嘘をつかなくても、一日中だって何回もあったっていいじゃないか。
「畑、手伝うよ」
「いらない」
「うん。僕がやりたくてやるだけだからほっといて」
そう言うとチュアトは少し戸惑ったような顔をした。
「勝手に畑いじられるの嫌だ。俺なりのやり方がある、勝手に触るな」
前だったらこの言葉にちょっと傷ついてた。でも言葉はそのままの意味だ。含みがないんだ、この世界の言葉は。
気遣いがないから、言葉にちょっと棘があるように聞こえるけど。事実を言ってるだけ。
「じゃあ、どうやるのか教えてよ。じゃないと勝手にやるよ」
「わかったよ」
たったこれだけでよかったんだな。生きにくくしていたのは僕自身だ。究極にシンプルなだけじゃないか、ここは。
なんてすっきり広い世界なんだろうな。
さて、僕の都合の良いように作り替えられたエイプリルフール。どうやって使っていこうかな? ちょっとだけワクワクしながら立ち上がってチュアトに手を伸ばした。
「なに」
「僕の手を掴んでよいしょって勢い良く立ち上がるためのもの」
「そんなのなくても立ち上がれる」
「知ってるよ。でもさっき疲れたって言ってたな。疲れてる時はこのやり方で立つと楽なんだ」
「楽する意味ある?」
「僕が満足する」
「なんだそれ」
「僕の人生なんだから、僕が満足するために行動するのは当たり前じゃないか」
本当に奇妙なものを見るような目で、それでも手を握ってくれた。僕の気持ちを相手に理解してもらう必要なんてない。共有しなくても、僕は勝手に満足するから。
自分の人生を楽しんでないなら、生きにくいのは当たり前だったんだな。誰かに強要しないで、僕が勝手に楽しめばよかったんだ。
勢いよく引っ張ると、チュアトはびっくりしたような顔をして思いっきり背伸びをする。
「意味、あった」
「そう?」
「空飛んだ気分になった。飛んだことないけどな」
口もとだけ小さく笑みを浮かべながらのその言葉に。僕では思いつきもしない発想に、僕はすごく久しぶりに声を出して笑った。
辛い事、不満、いろいろなことをなんでも嘘にしちゃって、笑って終わる日。馬鹿になる日。それでいい。誰かに嘘をつくんじゃなくて、自分で言って自分で笑い飛ばせばいい。
結局自分の常識に戻ってきたな。っていうか確か、これこそ本来のエイプリルフールなんじゃないのか。
それでもいいさ。こういうのは、自分なりに楽しんだもの勝ちだ。常に僕が優勝。だってこの世界には競う概念がないのだから。常に、一等を走り続ければいいだけだ。
他の誰かじゃない、まぎれもない僕の人生なんだから。謳歌しろ、嘘も本当も思いっきり!
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