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「ええ」
女はまるで懺悔するように目を伏せたまま乾いた声で続けた。
「最初の藍燈港で討った白毛大狼と碧眼紅甲狼は元は異人に嫁いだ女とその子として街の人々に放火の濡れ衣を着せられ叩き殺された親子でした」
女の目は少し離れた崖の断面に固まって咲く黄色い福寿草に注がれている。
「母狼を庇って先に私に斬られた碧眼紅甲狼は七つにもならずに死んだ女の子です。小さな足に母親が縫った粗末な赤い端切れの靴を履いていた」
ビュオオオオ……。
人の泣き声にも似た風の音が崖上に立つ女を斜めに斬りつけるようにして吹き始めた。
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