8人が本棚に入れています
本棚に追加
「次の高麗鎮で倒した焰虎と氷虎の二頭も元は継母に憎まれ、実の父親にも見捨てられて湖に身を投げた姉妹です」
再び断崖の遥か下を流れる河に目を落とした女の手が握り締められたまま震えた。
「互いに鏡に映したように良く似た、優しく愛らしい面差しの娘たちでした」
ザッ……。
崖の断面に生じた僅かな段に留まっていた小石の一つが風に攫われるようにして落ちていった。
女はその一石が深い谷底に吸い込まれていく様を見詰める。
最初のコメントを投稿しよう!