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駅から徒歩十分ほど進んだところに、大きいスポーツジムがある。一般的なトレーニング器具とプール、それからテニスコートもあり、スクールもあった。テニス初心者でも楽しめるよう、コーチがしっかりと見てくれる。
初級クラスで、平日の夜十九時から開始のコースがある。そこは時間的にも社会人のメンバーが集まっており、二十代前半から後半ぐらいの男女が毎週通っている。ダイエット目的、ストレス発散目的、それぞれあるが、みないつの間にか仲良くなり、スクールがない日に飲み会を開くほど親しくなっていた。
そこに一人、入会してきた女性がいた。
「あの……佐藤さんって、彼女いるんですか?」
おずおずと尋ねる。佐藤と呼ばれた男は、すらりと高身長で爽やかな顔をした好青年だ。彼は少し迷ったような表情をしたが、しっかり答える。
「いや、いません」
それを聞き、女性はみるみる顔を綻ばせた。誰が見ても、想いを寄せているんだと分かる状況だった。
周りの人間は見てないふりをしながら、二人の状況をしっかり見ていた。
そして一番端にいた女性二人組が、小さな声で会話する。
「ねえ……あれ、いいの?」
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