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体の震えが止まり、力が戻ったことで、リカルドは立ち上がった。
支えてくれていたアルジェンは、急に立ち上がったリカルドを見て、驚いた顔をしていた。
“どんなに完璧に思える作戦でも、人がやったことには、必ず穴がある。覚えておけ、絶望的な状況に立った時こそ、冷静になるんだ。そしてよく見てみろ、必ず突破口がある!“
セイブリアンの言葉を思い出したリカルドは、燃え盛る火の壁を見渡した。
恐れは心の奥底に消えた。
もう恐くなかった。
自分の背中にはセイブリアンが付いている。
そう思うだけで、無限に力が湧いてくる気がした。
「あそこだ……」
「え?」
「あの木が重なっている場所、あそこだけ油が撒かれなかったんだ。火の勢いが弱い」
「確かに……そうだけど……え、ちょっ、嘘だろ?」
リカルドの真剣な顔を見たアルジェンは、その意味を読み取って無理だと首を振った。
「予備の剣を借りる。早く助けに行かないと」
「リカルド! ダメだ、危険すぎる!」
馬に括り付けてあった、アルジェンの剣を取ったリカルドを見て、ルーセントが止めに走って来るのが見えた。
「誰かが行かないと……俺が行けたら続いてください」
「バカなっ、無茶だ!」
「無茶は承知です! でも、恐れないって決めたんです! 今まで悔しくても黙って、逃げてばかりで……そんな生き方はもう……」
“迷ったら、自分を信じろ、心の声に従うんだ“
今までセイブリアンが教えてくれた言葉が、リカルドの中で溢れ出し、大きな力となって背中を押した。
「できる」
“お前ならできる“
「できる……できる!」
“リカルド“
「大丈夫です、できます……セイブリアン様!!」
よくやった、頑張った。
セイブリアンにそう言ってもらえるなら、もう何も恐くない。
風で火の勢いが弱くなった一瞬を待って、リカルドは力強く走り出した。
「リカルドーーー!!」
真っ直ぐ、風のように走り、困難を乗り越える。
セイブリアンの言葉がリカルドの背中で羽となった。
まるで空を飛ぶように、リカルドは火の壁に飛び込んだ。
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