新しいわたし

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 スタッフ「お疲れ様でしたぁ。どうでした? リアルだったでしょ?」  客「ええ。すごくびっくりしました。雰囲気も本物っぽかったし、彼女に触った感触もリアルで」  スタッフ「最新の映像技術と特注の演技ロボットを使った、高精度の疑似シミュレーターですからねぇ。特に主役のこの子は、疑似人格AIによって入力した記憶や性格で“それらしい人格”を再現できますからね」  客「すごい技術ですね。結婚式の予行演習以外にも使えるのでは?」  スタッフ「実際、当スタジオでは依頼内容に応じて様々なシチュエーションを提供していますのでね。結婚式の演習からコスプレ撮影用のアニメチックな世界観まで、仕事は多岐にわたります。彼女はそのいずれにも“出演”させてるので、恐らく世界で最も多くの役を演じた女優になるのでは?」  客「ははは。それは確かに。そういえばさっきのシミュレーターでも、こちらの指示にない動きをしてましたね。周りを見渡したり、違う台詞を喋ったり……」  スタッフ「ありゃ、そうでしたかぁ。実は最近、AIのバグが酷くてですね。ダンプされる人格に齟齬があるみたいでして……逐次設定は初期化しているのですが、ちゃんとデバッグしなきゃだめですねこりゃ」  客「デバッグというと、この彼女が消えるということですか?」  スタッフ「新しく“生まれ変わる”、ということですかね」  客「なるほど……そうですか。では不具合が直ったらまた来ますよ。中々面白かったので、僕の彼女にも教えてあげようかと」  スタッフ「そうですか! それはありがとうございます! ではまたのお越しを。そしてどうぞお幸せに」  客「ありがとうございます。“生まれ変わった”彼女にも、どうぞよろしく」 ──
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