日曜日

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 背筋を伸ばして、上手からステージに上がる。客席からは興奮の声が沸き上がった。その声が重石となって、一歩一歩歩くたびに押しつぶされそうになる。前を見ると幸介は、プレッシャーなど全く気にしていな様子で、客席に向かって軽やかに手を振っていた。  各々の所定の位置に立って楽器を持つ。その頃には客席が静まり返っていた。皆、俺たちの歌を待っているようだった。  幸介はステージ中央に立ってギターストラップを肩にかける。バイト代を貯めて買った2本目のギターだ。太陽の光に反射して黒く光る。  それから片手でマイクにそっと触れた。ドラムのカウントが入る。  文字通り、ただの中庭はライブ会場に変わった。  最初に幸介の歌声と、ドラム、それから俺のギターが音を重ねる。  1曲目は、『怪獣の花唄』だ。  歌が始まると、静かだった客席は一気に興奮を取り戻した。歓声やリズムを取ってくれるような手拍子が心地良い。  景色も、匂いも、音も、すべてが初めての感覚だ。自分がまるで世界の中心になったような、最強になったような。何か言葉にしようとしてもバカみたいに単純なことしか思い浮かばない。ギターの指が止まることを知らない。ただただ楽しい。  最初の緊張感なんてどこかに消えて、凝り固まった足の筋肉は動きたいと騒ぐ。俺は本能に任せて、ステージの上で等身大の自分を見せつけた。  1曲目が終わる。  ぴったりと同時に鳴り止んだ音は会場を瞬時に静寂にする。  恐る恐る顔を上げると、会場は再び熱狂の渦に包まれた。  チラリと幸介を見ると、あの屋上にいる時の顔でニヤリと笑った。幸介はマイクを鷲掴みする。 「今年の文化祭の締めくくり、俺たちが盛り上げるぞ‼」  幸介の掛け声とともに物語が始まった。  
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