7人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
そうして私は記憶から消した。靜叔父さんと結婚できないこと=ずっと一緒にはいられないことは、数年しか生きていなかった私にとって、最も耐え難い出来事だった。
皮肉なことではあるが、それはなんと幸せなことだったのだろう。
十数年生きてきて、最もつらいことが靜叔父さんを亡くしたことでもなく、もっと酷いことでもなく、ただ靜叔父さんと結婚できない、それを知ったショックでしかなかったのだ。
ずっと、自分の体が嫌いだった。好きな人と結婚できない肉の檻を憎んでいた。どれだけ血を流そうと薄まらない血を恨んでいた。
だけど体が覚えていた。私の一番思い出したかったこと。一番大切なこと。
あったことはなくならない。思い出せないだけで。
記録を積み重ねて再現なんてしなくても。
ずっと、記憶にいた。私のそばに、いたんだ。
最初のコメントを投稿しよう!