廻らない地球《ホシ》の君

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  ◆◆◆◆◆  アレ? あの人……。  大学の帰りに、駅前のカフェにふらっと立ち寄った。窓際の席に座り外を見ていたら、またその人を見付けてしまった。  本当によく見るなぁと思い、注文したアイスティーを飲む。そのまま何気なく見ていると、向こうからパタパタと走って来た男の子が、その人にぶつかって転んだ。  あー、泣いちゃうと思ったら、その人は高い背を屈めてその子を抱き起こす。何かを語り掛け、大きな手で頭を撫でている。男の子はコックリと頷くと、頭を下げた。微笑みながら、ヒラヒラと振る手。歩き出した男の子も手を振り返す。  ほっこりとした気持ちになり、自然に祈璃の口元に笑みが浮かぶ。  その時、パンパンとコートを叩いて立ち上がったその人が、ふとこちらを見て視線がぶつかった。  あっと思ったら、何故かその人は酷く驚いて逃げる様にその場から立ち去る。まさか、そんな態度を取られるとは思っていなくて、呆然とその姿を見送った。  きっと、あの人も私に気付いている。    だから、次に会った時、祈璃は思い切って自分から声を掛けたのだ。  「こんにちは 」  マンボウの水槽の前に居たその人は、祈璃を見て目を(みは)っている。信じられないものを見ているみたいに。  いつまでも黙っているから、もう一度、「こんにちは 」と言うと、ゴン……と、マンボウが水槽にぶつかった。  え?ーーー。  あまりのタイミングの良さに、2人共水槽に目をやる。マンボウは気にもせずにスイーッとあっちへ泳いでいった。  「ふはっ……」  突然、その人が笑った。  「マンボウが返事したみたいだな 」  イメージと違う、無邪気な表情に祈璃は驚く。悪い人では無いのかも知れない。  祈璃は、核心に触れることを聞く前に、「マンボウ、好きなんですか? 」と聞いてみた。  その人は少しだけ言い淀むと、「……好きだよ 」と一言言った。  とくんと小さく心臓が跳ねる。自分が言われた訳でもないのに。  「私達よく、色々な所でお会いしてますよね? 」  「そうだね 」  やっぱり、この人も知っていた。それがたまたまなのか、わざとなのかは分からないけれど。  コクンと喉が鳴る。  「どうして、なんでしょう? 」  本当は、もっとはっきりと聞こうと思っていた、だけど。  「どう言う意味? 」  「失礼だとは分かっているんですけど 」  祈璃は今、それよりも違うことを知りたいと思ってしまっていた。  男は自分の頭をくしゃりとかくと、溜め息を()く。  「僕が君に付き纏ってるとでも……」「あの、私っ、本山(もとやま) 祈璃(いのり)っていいます。貴方の名前を教えて貰えませんか!! 」  馬鹿なことを言ってるって分かってる。でも、どうしても知りたい。    「私達っ、こんなに出会うってことは、きっと趣味が合ってるって思うんです! お友達になれたらきっと!! 」
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