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何がストーカーだ、自分の方がよっぽど怪しいと思いながら、祈璃は叫ぶように言っていた。
「『お友達』って、何? 君、学生でしょう? 僕と幾つ離れてるって思ってるの 」
「友達に年齢なんて関係ないと思います! 」
「やだね 」
必死の訴えも虚しく、きっぱりと撥ねつけられた。
「え、じゃあ、名前は…… 」
「何で、見ず知らずの君に名前を教える必要があるの? 」
答えられない。承知させるだけの理由がない。知りたいのは祈璃の単なる我儘で、この人の言うことは最もだ。
しゅんとして俯いていたら、「しょうがないな 」と声が聞こえた。
「忘れないって言うなら、教えてやってもいいよ 」
祈璃は勢いよく顔を上げる。
「忘れたりしません! 」
「シズキ 」
「え…… 」
「祠に月と書いて祠月だ 」
それだけ言うと、祠月と名乗った男は踵を返して歩き出す。きっと、付いてくるなって意味だ。
「あのっ、またどこかでお会いした時は声を掛けてもいいですか? 」
背中に問えば、「勘弁してよ 」と祠月が何故か悲しそうな瞳でこちらを見た。
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