??時

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   どうやら、私は霞がかった意識でいたらしい。  頬に当たった水滴で、はたと気がついた。  ここはどこだろう?    目を開けてみたら真っ暗闇だった。  それも、座った状態で、どうやら体が何かで固定されているようだ。  両腕が後ろで縄か何かで縛られている。  自分の名前も思い出せない。  どうやら記憶喪失か一時的な記憶障害なのだろう。  ここは、静かな空間のようだ。  少し寒いくらいだが。未だぼんやりしていて特に不安もない。だけど、不満を言わせてもらえば後ろに不恰好に縛られた両腕がひどく痺れる。 「お腹空いてる?」  唐突に前方から若い女性の声がした。 「え?!」 「お腹空いてる?」 「え? あ、ああ」  私は朝から何も食べていなかった。  仕事前の朝食はいつも食べないのだ。  そうだ。ここにいる前は仕事の日だった。  多分、その日は月曜日だった。 「お腹空いてる?」 「あ、そうだよ。お腹空いてるよ」 「お腹空いてる?」 「……」  なんだか私は怖くなって来た。  この声は女性の声だが、何故だろう?    チューブや何かの機械が口に挟まったくぐもった声にも似ているのだ。  声の主からモーターなどの駆動音でもしてきたら、私は不気味過ぎてその場で卒倒していただろう。
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