もしも祝福されたなら

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「百聞は一見に如かずってな。大勢の人間が集まるステージの上で堂々と息の合ったダンスを見せつけてやれば、観客は俺らをカップルだと認識するだろ。その結果が拍手喝采なら沙良も安心して俺の隣に立てるよな? 言質は取ったんだ。それでもやっぱり自信がないとか言わせないから」 「……いやいや、なんでそんな話になるの!?」  我に返った沙良は激しく右手を振った。  左手が動けば両手を振って、ついでに首も振り、全身で『無理』をアピールしていたところだ。 「踊りたいなら瑠夏に言って!? あの子は昔ヒップホップ習ってたからめちゃくちゃ上手いし、動きもキレッキレだよ!? ダンスの授業のときは先生を含めた全員から拍手喝采を浴びてたもの! 美人だから秀司と踊っても絵になるわよ!?」  ちなみに当人は現在、自分の席で静かにブックカバーを付けた文庫本を広げている。  ここからそんなに離れていないため、瑠夏にも沙良たちの声は届いているはずだが、聞いていないのか、あるいは聞いていても我関せずを貫くつもりらしい。  どこまでもマイペース。それが長谷部瑠夏だ。
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