もしも祝福されたなら

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「長谷部さんと踊ってどうするんだよ。沙良とじゃなきゃ意味がないんだって」 「甘い言葉を言ったって絆されないからね!? 私はただの素人だよ!? 素人が大勢の前で踊るなんて、自ら恥を晒すようなものじゃない! とてもそんな度胸は――」 「委員長。ここは不破の話に乗るべきだと思うぜ?」  突然、山岸が話に割って入ってきた。  そちらを見ると、自分の椅子に横向きに座る彼は右手の手のひらを天井に向け、肩を竦めた。 「周囲に『私たち付き合ってます』っていちいち言って回るより、文化祭のステージで視覚と聴覚に同時に訴えたほうがインパクトは大きい。さすがカップル、素晴らしいダンスだったと観客を唸らせることができれば、不破に言い寄る女もぐんと減るだろうよ。つまり委員長の悩みの種が減るってことだ」  ぱちん、と綺麗にウィンクする山岸。 「……それはそうかもしれないけど……」 (いや、問題はそこじゃない。そもそも私は偽りの彼女なんだって! 文化祭が終わったらすぐ別れるっていうのに、大々的にカップルをアピールしてどうするの!? 一体何考えてるの!?)  横目で秀司を見るが、秀司はただ笑っているだけ。
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