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地獄の番犬
五人はついに冥界の最下層氷地獄〔コキュートス〕にたどり着いた。
冥界の最深部には大きな城が建てられていた。
それまでの城門や城壁とは比較にならない大きな宮殿であった。
「ここがソフィーの住む魔窟か。ごたいそうなものだな」
ルナが半分呆れてそう言う。
いい身分だなという意味と、これだけの城を築き上げるのに費やしたであろう犠牲を考えると気分が悪くなるという思いの入り混じった感想であった。
「みんな気をつけて。城門を開けたらすぐにとんでもない番犬がいるから」
この宮殿をよく知るアトラスがみんなに注意を促す。
「とんでもない番犬ね。何となく想像ついちゃったよ」
ルナがそう言って城門を開けると「想像通りのもの」がそこにいた。
頭が三つある巨大な番犬「ケルベロス」であった。
「城門を開けるといきなりおでましか。地獄の番犬ケルペロス」
「番人じゃなくて番犬とはずいぶんと悪趣味ね」
ルナとエレナがケルベロスを見つめる。
すると突然ケルベロスが叫び声を上げる。
ルナたちは警戒して一歩後ろに下がると、巨大な番犬の頭が三つに分かれて人間の形に変化していく。
「何が起きてるんだ?」
ジャンヌが驚いて見ていると、三人の魔女が出現した。
「風」
「海」
「雷」
まさか魔獣から魔女に変身するとは予想外だったわね。その名前通りの魔法を使うと見ていいのかしら?」
ルナの問いに三人は含み笑いを浮かべる。
その表情が肯定だと物語っていた。
三人のうち一人はルナたちが初めて見る雷の魔法を使う魔女であった。
「あのまま戦うのと、この三人と戦うのとどちらが楽だったかな」
ジャンヌがボヤくように言う。
「どのみちタダで通すつもりはないんだろうから同じ事よ。それより誰がどれと戦う?」
ルナの問いにそれぞれの特性を考えた方がいいとエレナが答える。
「ならば海には私が」
「風は俺が行こう」
アトラスとミルコが海と風に対応すると言うのでルナは「じゃあ私は雷で」と言って決まり、三人はそれぞれ対応する魔女の前に対峙する。
エレナとジャンヌは後方待機。
万一の時に加勢する事となった。
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