23人が本棚に入れています
本棚に追加
八人の魔女集結
ロザーラたちが冥界の入り口で亡者たちを蹴散らしたという報告はすぐにソフィーに知らされた。
報告を受けたソフィーはひと言「目障りだな」と言うに留まった。
「ソフィー様、許可を頂ければ私が奴らを倒して参りますが」
そう申し出たのは火星の魔女エルザ。
赤い服に茶髪の髪。冷徹な表情の魔女は主の返事を待つ。
だが、ソフィーは腕を組んだままつまらなそうな表情で答える。
「捨てておけ。この冥界の最下層コキュートスまで来られるものなら来てもらうじゃないか。それまで余興を楽しませてもらうとしよう。お前は第八階層の守衛にあたれ。そこまでルナたちが来たならば、その時は好きにするが良い」
「かしこまりました」
第一階層から第八階層まで、この冥界には各階層を守るソフィーの手下たちがいる。
それらをすべて倒さない限り、最下層コキュートスにいるソフィーの元には辿り着けない。
「海王星の魔女アトラス、海王星の魔女エレクトラよ。お前たちも自分の持ち場である第六、第七の守りに向かえ」
アトラスもエレクトラの二人はお辞儀をしてそれぞれの階層に向かう。
海王星の魔女アトラスはソフィーについてはいるが、心底尊敬したり屈しているわけではなかった。
友人である天王星のエレクトラが付き従ったので、それに追従しただけである。
アトラスは青い髪に青い瞳が特徴的な魔女だ。
それぞれの持ち場に向かう途中でエレクトラがアトラスに話しかける。
エレクトラはアトラスとは親友同士で、銀色のロングヘアに琥珀色の瞳をした白銀の魔女。
「ルナたちも落とされて来たか。正直もう少し先だと思っていたけど、ソフィーが予想より動くのが早かった」
「あいつの祖先が二千年前に冥界に叩き落とされてから世界は平和だったのに。ソフィーが冥界を脱出する力を持ったと知った時には何で私たちの時にって思ったよ」
「アトラスもソフィーのやり方に愛想を尽かしたのか?」
「そうだね。元から付きたくてついたわけじゃない。エレクトラが付いたから仕方なく。。」
「私はソフィーを倒そうと考えていた」
「え?」
エレクトラの言葉にアトラスは驚いた。
「あいつは大陸の魔女を全滅させようとしている。私たちはそれなりに人間とも争いなく生きてきたし、多少の役にはたっているつもりだ。なのにあいつの勝手でなぜ殺されなければならない。
私はあいつの側近として近くで能力や性格を観察して、倒す機会を狙っていた。ルナたちがこの冥界に来た今がそのチャンスだと思っている」
「エレクトラはそこまで考えていたのね。確かに今この冥界には火星を除けば彗星、金星、月、木星、土星、そして天王星と海王星の私たちを含めて七人の魔女が集結している。ソフィーを倒す絶好の機会だと思う」
「各階層の守衛もエルザ以外はルナたちの敵じゃないだろう。とりあえず私は自分の守衛である第六階層に向かう。アトラスも第七階層で待機してルナたちを待つといい」
「わかった」
アトラスはいったん第六階層に向かおうとしたが、ふと思い出したように立ち止まる。
「そう言えば。。エレクトラ、ソフィーの最終目的は二千年前に祖先をこの冥界に突き落とした『地球の魔女』への復讐だって聞いた事がある。だが、地球の魔女なんて本当に存在するのか? 誰も見た事がないじゃないか」
「その鍵を握っているのがルナなんだろう。奴がルナを執拗に狙う理由もおそらくそこにある」
「地球の魔女か。。ソフィーに唯一対抗出来るといる幻の存在。そんな奴がいるのなら会ってみたいね」
「地球の魔女」はどこにいるのだろう?
いるというのは過去の文献からもわかっているのに、これまで魔女たちの間でも見た、会ったという話を聞いた事がない。
果たしてこの時代に存在するのかすらわからない謎の多い魔女である。
文献によれば天使のような羽を持ち、すべて魔女を合わせた魔力よりも強力な聖属魔法を使うとある。
そんな魔女が本当に存在するのであろうか。
☆☆☆
一方、合流したロザーラとルナたちは冥界の最下層目指して先を進んでいた。
「ロザーラ、この先はどうなっているんだ?」
ルナの問いにロザーラとヴェラがここまでわかっている限りの説明をする。
「そうだな。わかりやすく説明するとビルの屋上から下に降りていくようなイメージを想像するといい。そしておそらくその最下層にソフィーはいる」
「冥界は全部で八階層まであって、各階層にはそこを守る守衛がいる。物分かりのいい奴なら戦わずに通してくれるだろうけど、ソフィーの手下じゃ期待は出来ないね」
ヴェラは皮肉混じりにそう言ったが、結果的にその言葉は的中する事となる。
ルナたちが第一階層の門をくぐり抜けると目の前には大きな宮殿が建っていた。
宮殿の前には番人らしき男が立っていた。
「生者が肉体を持ったままここに来るとは。お前たちソフィー様に冥界に落とされたな」
「お前がここの番人か?」
ロザーラの問いに男は答える。
「態度が良くないがまあいい。俺はソフィー様に仕える側近の一人、カロン」
「ソフィーの手下か。みんな、ここは私に任せろ」
木星のロザーラが前に出てカロンと対峙する。
「ソフィー様から好きにしていいと言われているんでな。一人ずつ血祭りにあげるか、まとめて始末するか考えていたが、まずはお前から血祭りにあげてやる」
カロンはそう言うといきなり魔法を放ってくる。
「炎の最大級魔法『ファライガ』」
最上級の炎系魔法がロザーラに直撃した。
「ロザーラ!」
ルナが思わず声を上げるが、ロザーラがスティックを横に一閃させると体を包んでいた炎がすべて弾け飛んだ。
「なんだと?」
「炎魔法を得意とする私に炎魔法とは笑止。炎魔法ってのはこういうのを言うんだ」
今度はお返しとばかりにロザーラがファイラガを放つ。
巨大な炎がカロンを包み込むと、カロンは断末魔の悲鳴をあげて黒焦げになって消滅した。
「こんな程度で階層の番人を任されているのか。ソフィーもさぞ人手不足なんだろうな」
第一階層はロザーラの圧勝であった。
最初のコメントを投稿しよう!