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「ジャンヌはおそらくミルコと同じように剣で戦うだろうね」
ロザーラがそう言うとエレナがジャンヌの一族について簡単に説明してくれた。
「ジャンヌの一族は代々男性の家系でね。ジャンヌが初めての魔女。つまり女性の後継者になったんだけど、それまでは魔法よりも剣術主体の家柄だったので、ジャンヌも魔法より剣を得意としている。
彼女の『時の魔法』は私たちと違ってやたらに使える魔法じゃない。だから自然とその戦い方になったというわけね」
ジャンヌとフォボスの戦いは予想通り剣と魔法の戦いとなった。
フォボスが氷の魔法を放ち、ジャンヌがそれをかわしながら剣で斬りつけていく。
「魔女なのに剣で戦うとは面白い」
「私の魔法はやたらと使えるもんじゃないんでね」
「ならこっちは遠慮なく魔法を使わせてもらうとしよう。氷魔法『オルガ』」
オルガはルナも得意とする氷の氷柱で相手を攻撃する魔法である。
「おっと」
ジャンヌは氷柱を剣で弾き返していく。
だが、その合間を縫ってフォボスが剣を繰り出して来る。
ジャンヌは氷柱とフォボスの剣の両方を上手くさばかなくてはならなかった。
「まずいな。。相手の魔法と剣の同時攻撃に対してジャンヌは避けるだけで精一杯になっている。形勢が悪い」
ロザーラの指摘通り、ジャンヌは相手の攻撃を避けるのに精一杯で攻撃の糸口が掴めなかった。
「落ち着けジャンヌ。そんなに強い相手じゃ無い。冷静に対応すれば勝てる」
ルナも声をかけるが、内心は不安であった。
剣士の実力だけで見ればジャンヌはミルコより劣る。
これがミルコであれば相手の氷柱攻撃をかわして反撃に出る事も出来るだろう。
だが、ジャンヌにそれが出来るのか未知数であった。
「どうした? お前の剣は守るだけの防具か」
フォボスの挑発にもジャンヌは一切乗らない。
冷静に対応は出来ているようだ。
だが、ルナたちから見ると徐々に追い詰められていっているように見える。
「チョロチョロと動きやがって。これで動きを止めてやる。氷魔法『オアロ』」
氷の結晶がジャンヌの体を取り巻いて身動きが取れなくなる。
「まずい。。ジャンヌ!」
ルナが声を上げた時、戦いを見るのに夢中になってロザーラが持っていたスティックを落としてしまった。
「おっと、いけね」
ロザーラがスティックを拾い上げようとした時であった。
落としたはずのスティックを手に持っていたのだ。
「え? これは?」
身動きの取れなくなったジャンヌにとどめを刺そうとフォボスが一気に距離を詰めに行く。
「消えろ!」
フォボスがジャンヌに剣を振り上げた瞬間、これを待っていたジャンヌが剣を一閃させる。
ジャンヌが動けないと鷹を括っていたフォボスは完全に油断していて、この攻撃を避けきれず体を真っ二つに斬られて悲鳴すら上げる間も無く消えていった。
「ふう。危なかった。十秒間だけ時を巻き戻したんだ。相手が『オアロ』を放ったすぐ直後にね。防戦一方になったように見せて時を巻き戻したのに気が付かれないようにしたのさ」
戦いを終えたジャンヌがルナたちに手を振る。
「まったく心配させてくれるよ」
こうして第四階層も突破したルナたち。
これでようやく半分である。
ソフィーの待つコキュートスに向けてルナたちは次の第五階層へと向かう。
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