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ルナの出番
第四階層を突破したルナたちは長い道中のようやく半分を越えた。
「残る階層はあと四つ。ここから先は今までのようにはいかないだろうな」
ルナがそう言うとエレナが顎に手をあてて考えている。
「思っていたよりも番人の力が大した事ないのが気になる。。ここまでは突破される事を予め予定していたとしたら、ソフィーは何を考えているのか」
「俺なら適当な兵士を当てて、ここにいる魔女たちの魔法と魔力がどんなものかを確認しますな」
ミルコの言葉にエレナもうなづく。
「それしか考えられないわね。おそらくここまでの私たちの戦いはソフィーに監視されていると思っていい」
「いくら監視されていようが、私たちは前に進むのみ」
ロザーラがそう言うとエレナも「そうね」と返した。
監視されていようがいまいが、戦って先に進む以外、自分たちにやるべき事はないからだ。
一行は次の第五階層に到着する。
第五階層の守衛はダイモス。
身長二メートルはあろうかという大男であった。
「ロザーラ、ジャンヌ、ミルコも一度戦っている。次は私が行くよ」
始めはロザーラが行こうとしたが、ルナは今度こそ自分が出向くと言って聞かない。
「ここはルナに任せましょう。いくら魔力の温存と言ってもまだ先は長い。多少の浪費なら私の回復魔法で何とかなる。ルナ、後の心配はせずに思い切り戦って来て」
「エレナ、ありがとう」
エレナの後押しもあり、ここはルナに任せる事となった。
ルナがダイモスの前に歩いて行くが、五メートルほどの距離を置いても体の大きさがはっきりとわかる。
見下ろす視線でダイモスはルナを小馬鹿にしたような口調で話しかける。
「ほう、お前がルナムーンか。相手にとって不足なし」
「私はあんたなんかに興味ない。あるのはこの先に待ち構えている残り三人を倒してソフィーの待つコキュートスに行く事」
「そいつは無理だな。お前はここでくたばるんだ」
そう言うや否や先制攻撃を仕掛けて来たダイモス。
「風の魔法『ルガナ』」
ダイモスが風の魔法を唱え、風圧の刃がルナを襲う。
ルナは巧みにそれをかわしていく。
風の魔法はルナも使えるし、ルガナは得意としている魔法なだけあってその特徴もよく知っている。
「これならどうだ!」
ダイモスはルナの動きを封じ込めるようにルガナをルナの体の周りに回転させるように放つ。
「ちっ!」
ルナは少し面倒くさそうな表情を見せる。
これはさすがに避けられないとわかっているからである。
そしてルナも魔法を唱える。
「風の魔法『ルガナ』」
ルガナにはルガナを。
ルナの周りを取り巻いていた風の刃は同じ風の刃によって互いにぶつかり合い消し飛んだ。
ロザーラとエレナはルナの戦いを見てすぐに魔力を温存しようとしているのに気がつく。
「ルナの奴、なるべく魔法を使わずに戦おうとしているな」
「ええ。最低限の魔力しか出していない。それで退けられる相手であればいいけど」
体の大きさと魔力は関係ないが、パワーのある相手はそれだけでも厄介なのだ。
体力任せにかかって来られると魔法など関係なしに力で押さえ込まれてしまうからである。
「心配無用。いざとなれば俺が助けに入りますから」
ミルコがそう言うと、すかさずジャンヌがツッコミを入れる。
「それが一番心配なんだけど」
「ジャンヌ殿も最近口が悪くなってきましたな」
「ミルコ、そこで助けに行けばルナの気を引けるとか思っているでしょ?」
「当然ではござりませんか。俺の強さとかっこよさをあらためてルナ殿に見せつけるいい機会ですぞ」
「少しも否定しないところがミルコらしい」
そんな話をしている間にもルナとダイモスの戦いは双方魔法の掛け合いとなっていた。
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