22人が本棚に入れています
本棚に追加
海王星のアトラス
第六階層まで到達したルナたち。
その前に立っていたのはこれまでとは明らかに雰囲気の違う人物であった。
ロザーラがそれに気がついてルナに声をかける。
「ルナ、あいつは魔女だな。今までの奴らとは明らかに違う」
「うん。かなりの魔力を感じる。。」
ショートヘアの青い髪に青い瞳の見た目十七、八歳くらいの少女が腕を組んで城門にもたれ掛かるように立っている。
だが、その目に敵意は感じない。
どちらかと言えばルナたちに興味を示すような感じであった。
「ルナムーンたちだね。私は海王星の魔女アトラス。この第六階層の守衛を務めている」
「アトラス。私たちはコキュートスに行ってソフィーと戦わなければならない。ここを通してもらえないかな」
「君たちは本当にソフィーと戦って勝てると思っているのか?」
「それはわからない。だけどソフィーを倒さなければ私たちは元の世界には戻れない以上、戦わなければならない」
「ならな君たちの力を見せてくれないか」
アトラスはそう言うと魔法を唱える。
「いでよ『リバイアサン』。我が命に従い侵入者を打ち倒せ」
アトラスの召喚により魔獣リバイアサンが異空間より現れた。
「な。。」
ルナだけでなくロザーラたちもその巨大な姿に驚く。
それは全長数百メートルはあろうかという巨大な海龍であった。
「私は口先だけの者を信用しない。君たちがソフィーを倒せるというのなら、少なくともこのリバイアサンを撃退出来なければ話にならない」
「こんなバカでかい竜を撃退しろって言うのか? 始めから通す気がなかったんだな」
ロザーラが戦おうと前に出ようとしたところをエレナが制する。
「ロザーラ、ここは私に任せて」
「エレナ? エレナは攻撃魔法が使えない。どうやって戦うんだ?」
「リバイアサンは海龍。それならば、それに応じたやり方があるのよ。まあ、見ていてちょうだい」
エレナがゆっくりと前に進むのをリバイアサンは上空から見下ろしている。
「リバイアサン、攻撃開始」
アトラスが命じるとリバイアサンは奇声を発して魔法を放つ。
水の最大魔法『スレイガ』である。
巨大な水の渦が現れてエレナに迫ってくる。
「防御魔法『クレメンティナ』」
エレナは自分の体の周りに防御魔法を張り巡らせると水の竜巻は凄まじい暴風と轟音でその周りを通り過ぎていく。
「エレナは防御魔法も使えるんだ」
ルナも初めて見るエレナの戦いを興味深く見ている。
「エレナ様は回復系だけでなく聖魔法も使えるんだよ。ただ、どちらも戦闘には向かない魔法。それなのに、どうやってあのリバイアサンを倒そうとしているのか。私にもエレナ様のお考えがわからない」
「しかしルナ殿もお美しいですが、エレナ殿が戦う姿もまた凛々しいですな。まるで戦いの女神アネナを彷彿させるようですぞ」
「私たちがエレナの心配をしている時にそんな変態思考で戦いを見るな」
「いや、エレナ様の戦う姿は確かにお美しい」
「おお、ジャンヌ殿もそう思いましたか。ルナ殿、我々は見た感想を言っているだけですぞ」
「そう言われて見ると確かにエレナは綺麗。。いや、私までそんな変態思考になってはいけない」
ルナはミルコの言葉に惑わされまいと首をプルプル横に振って妄想を跳ねのける。
ロザーラだけが呆れ顔で他の三人を無視して戦況を見つめている。
そんな事を言っている最中にも戦いは新たな展開を迎えていた。
エレナが初めて見せる聖魔法を唱えたのだ。
最初のコメントを投稿しよう!