1章 秘密基地と大人

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 長年、土中に放置していたからだろう。ケースの蓋部分から側面、底の部分まで、至るところにサビをサビが侵食してしまっていた。  だが奇跡的な事に塗装は剥げておらず、その表面にはしっかりと、これを埋めた当時のままのデザインがそこに残っている。  ケース蓋の部分。そこには少年向けとわかる絵柄で、4人の男女が描かれていた。  個性的な髪型や髪色、制服を身に着けた高校生ぐらいの少年少女達。一部分サビで埋もれたり、ちょっと色が薄まってしまってはいるものの、それでも10数年前に見た時とほとんど変わらない姿でそこに立っている。  そしてそんな彼らの頭上には、やはり10数年前の時となんら変わりない太字ゴシックフォントで、見覚えのある言葉が刻まれていた。 『ヒーロック!』――と。 「なつかしぃなぁ」 『ヒーロック』。英語でのスペルは、『HEROCK』。  正義の味方の『HERO』と音楽の『ROCK』をかけ合わせた造語で、俺が小学生の頃に流行っていたゴールデンタイム枠のアニメのタイトルである。
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