1章 秘密基地と大人

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 確かヒーロックのような『練習場所』が欲しくって作ったのだ。  ヒーロー集団でありながら、バンドでもあったヒーロックには、『練習場所』という名の秘密の基地が存在していて、その真似事をする自分達にも自分達だけの基地が欲しいと思ったのだ。 (まぁ、それでもやっぱり言い出しっぺはやっぱり思い出せないが。う~ん、誰だっけな、最初に言ったの)  でも、これを埋めようと言った奴の事は、今でもしっかりと覚えている――。  手の中のペンケースに目をやる。軽く振ってみると、カシャンカシャンと、中で何かがケースにぶつかる音がした。  。それが聞こえてきた事に、ホッと胸をなでおろす。 「うん。中身も変わってなさそうだな」  誰かに見つかっていじられたとか、そういう形跡はなさそうだ。  でもこれだけサビてると、中身が無事かどうかは怪しいところだな。  思わず眉間にしわを寄せながら、腕を組む。 (『タイムカプセル』って、案外埋めるの難しいもんだったんだなぁ)  埋めて時間が経ったら掘り返すだけと思っていたが、どうやらその程度の代物ではなかったらしい。もしあの日に戻れるなら、もっと違うケースにいれるか、袋か何かに包んでから埋めろって忠告してやりたいぐらいだ。 「……あいつら、元気にしてっかな」  ふいにそんな呟きが、ぽつりと俺の口からこぼれた。
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