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驚愕の2文字で染まった男のものだと思われる声達が、俺の耳に飛び込んできた。
まるで、はち合わせるとは思っていなかった相手と出会ったかのような声だ。予想外の人物との出会いに驚いている声。それを受け入れられずに困惑し、動揺している――、そんな声だ。
だが、なんとなくその声に聞き覚えがあるような気がした。
頭の奥底にかすかに残っている、古びた記憶。その中に、その声があるような気が――。
『透くん、昨日のヒーロック見た? ギターのエレキ野郎の敵とのソロシーン対決! すっごいロックだったよね⁉』
『おーい、透っ! 今日も秘密基地行くんだろっ! くっそかっけぇスティック作ったから楽しみにしとけよ!』
「あ⁉」
思い出したっ! と思わずその場を立ち上がった。
ガサッ!! と今までで一番大きな音をたてて、周囲の草が揺れる。次の瞬間、草の中から急に飛び出てきた俺に驚いた男達の声が、「うわっ!?」「うぉっ!?」と夜の空き地内に響き渡る。
飛び上がった先、そこには居たのは予想通りというかやっぱりというか、2人の男達だった。
1人は、さっぱりとしたショートヘアが特徴的な男だった。柔らかな焦げ茶色の髪をした、優しそうな顔立ちの男。背丈は俺よりそう変わらないか、ほんのちょっぴり上か。少し線の細めの男だ。
反対にもう1人の方は、いかつい雰囲気のある男だった。短く刈り上げられた黒髪に、肩幅のあるちょっとごつめな体つきが特徴的で、強面の2文字が似合いそうな顔つきの男だ。この場にいる誰よりも身長が高く、威圧感が強い。
そんな全く見た目も雰囲気も違う男達の目が俺に向けられる。
ギョッ、とその瞳を大きく見開きながら。
そして――……。
「「「……あっ!?!?!?」」」
瞬間、全員の声が重なった。
まるで、どっかに大事な何かを落としてしまった事に気づいた時のように、
まるでたった一瞬で、忘れていた何かを思い出した時のように、
10数年ぶりにこの場に集まった子ども達の声が、響き渡ったのだった。
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