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自分の腰あたりで大きく揺れ動く草をかきわけ、空き地の中を歩く。
小学生の頃は自分の背丈ぐらいあり、まるで先見えぬ緑の壁のように感じていた雑草達。だがこうして大人になった今歩くと、実はそう大した高さでもなかった事に気づかされる。
一歩、また一歩動く度にガサりガサりと立てて揺れる草を見ながら、この感じじゃ、草の中に隠れていても大人達には居場所がバレてたんだろうなぁ、と当時を振り返り苦笑する。
(でもあの頃は、本気で隠れられているって思っていたんだよな)
不思議なことに。
ここが本当に、自分と仲間達だけしか知らない秘密の場所なのだと思っていた。疑いようもなく、ただひたすらに真っ直ぐに信じていた。
――そして、そんな奴らだったからたぶん、あんな事ができてしまったのかもしれない。
「う~ん。記憶が正しければ、この辺りなんだけど」
空き地の最奥、コンクリートブロックの壁際辺り。そこまで差し掛かったところで、一旦足を止める。そうしてかつての記憶頼りに草をかき分けながら、この辺りにあるはずの『物』を探す。
が、それらしき物は見つからない。それどころか、わけてもわけても視界に飛び込んでくるのは草ばかりで、地面自体が一向に見えてこない。時刻も夜という事もあり、手元が暗くてよく見えないとうのも、捜索が難航している理由のひとつだといえる。
周囲に街灯がないわけではないが、それらの灯りはあくまでも道を照らすために存在するものだ。
こんな草だらけの工事現場に忍び込む大人に光を分け与えてくれるほど、優しい存在ではない。
「あーもうっ、草邪魔すぎて、全っ然わからんっ。……あ、そうだ」
「『子どもの目線』になれば、わかるんじゃね?」――ふいに浮かんできた考えに、ぽん、と手を叩いた。
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