俺、聖女じゃないです

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 嘘だろう? 聖女がここにいるのか? 早く逃げないと浄化されてしまう。戦ったところで瞬殺される自信があるくらい俺は魔力が弱いのだ。  まだ打ち付けた背中が痛くてたまらないが、必死に起き上がろうともがく。すると、誰かの手が背中に添えられ、起き上がるのを助けてくれた。 「あ、ありがと……えっ」  反射的にお礼を言おうとしたが、相手の姿が目に入った途端にビクッと体を縮こまらせる。  何故ならば、そこには金髪碧眼の青年がいたからだ。目元は少し垂れて甘い雰囲気を漂わせ、鼻筋はすっと通り、唇は薄めで上品に弧を描いている。ものすごい美形だ。だが、一番俺が驚いたのは彼の着ている服だった。人間界の神官が来ている裾の長い衣装に似ていたのだ。  まさか、この青年は神官なのか。神官にしては帽子のようなものを被っておらず、代わりに冠をのせているが。  神官じゃないかもしれないが、類似する役職なのかもしれない。どうしよう、なんで急にこんな場所にいるんだ俺は! 混乱でじわっと涙がにじんでくる。 「聖女よ、なぜじりじりと距離を取る?」  青年が首を傾げながら言った。しかも俺を見つめて。 「聖女、ですか?」 「あぁ、そなたがわたしの聖女だ」 「……いえ、違うと思います」  思いますというか、絶対に違うけどな!  俺はどんなに弱っちくても魔族だ。聖女であるはずがなかろうに。 「信じられないかもしれないが、信じろ。わたしが聖女召喚の儀式をして現われたのだ。召喚されたからにはそなたがわたしの聖女だ」  真顔で言い切られた。いや、嘘でしょ。聖女を召喚したくて、魔族召喚するって、あんたも結構なポンコツだなと言ってやりたい。だが、言えない。言ったら俺が魔族だってバレてしまうから。  言いたいけど言えないジレンマに、ぎりぎりと歯を食いしばった。だが、ふと重要なことに気がついた。
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