俺、聖女じゃないです

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「はっ、でも俺、男です。聖女っていうくらいだから、女の人を求めてるんですよね?」  これで解決だと嬉しくなる。 「便宜上、聖女と称しているだけだ。この国では神の子孫である国王を支えるものを指している」 「つ、つまり、性別は関係ないと?」 「そうだ。確かに女性が召喚されることが多いが、先々代の王の時は男だったと聞いている」  前例あるの? じゃあ男だから聖女じゃないといっても通じないのか。どうしよう。 「まぁ、先々代は女王だったのだが」 「それを早く言えよ!」  思わず叫んでしまった。焦るばかりで全然頭が回らない。いつも回っているのかと言われるとそれは微妙なのだけれど。 「そなた、何故喜ばない。聖女に選ばれたのだぞ?」  青年の言葉に、肯定する他の声が聞こえてきた。びっくりしてあたりを見渡すと、俺たちを囲むように、少し距離を空けて人がたくさんいるではないか。神官の帽子を被っているものもいれば、貴族や護衛騎士もいた。  完全に取り囲まれているじゃないか。目の前の青年に気を取られていて、他に人が居ることに気がつかなかった。  しかも、さきほど神の子孫がどうのと言っていた。確か、人間界に神の子孫が統べる国があったはずだが……その国に召喚されたということか? 「あ、あの、俺、急にここに移動させられて、混乱してるって言うか、帰りたいと言うか」 「そなたはどこに居たんだ?」  あ、それ答えたらアウトなやつ。どどどどどうしよう。魔界の黒い森とか言えるわけない! 「ええと、すっごい田舎で、きっと皆さん知らないんじゃないかなぁ。というか、ここはどこなんです?」 「ラウル神国だ」
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