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「あれ? ウソ!」
去年買った春物のスカートが締まらない。
こんなにキツかったっけ?
そう思い、部屋の全身鏡を覗き込む。
そこには、ぽっちゃりとした顔、パサついた髪、むちむちの二の腕、出てきたお腹の肉、パツパツの太ももが写し出されていた。
うん。分かってたけど、やっぱり太ってた。
私はそっとスカートをタンスに戻し、一昨年の春物のスカートを出して履く。
制服も一時期ゆるかったけど、最近キツかったもんな。
あーあ、一年も経てば元通りかー。
そう思い、時計を見れば十一時前だった。
「やっば! 時間!」
私はメイクも適当に、慌てて家から出て行く。
今日は日曜日で、大和とデートの約束をしているのに時間ギリギリ。
その為、私は髪がぐちゃぐちゃになることも忘れ、ひたすら駅へと走る。
すると、やっぱり大和が先に来ていて、駅の改札の前で待ってくれていた。
「ごめん!」
「大丈夫。行こうか」
いつもと同じ穏やかな笑顔の彼は性格も優しく、それがそのまま顔に表れたような人。
笑うと目が細くなり、口角が上がるとそれと共に えくぼが浮かび、私より少し背が高く、スラッとした体をしている。
流行りの服装はあまり好きではないみたいだけど、清潔感ある服に身を包んでいて、私はそんな彼にどこか安心してしまう。
私達は電車に乗り、三駅先のショッピングセンターに着く。
今日は私が買い物に行きたいと言った為、付き合ってくれることになっていた。
好きな店を回っていくと、これ似合うんじゃないかと私が好きなスカートを選んでくれる大和。
……ありがとう。でもね、今は入らないわ……。
やんわりと断り、ダイエットしないといけないと溜息を吐く。
すると。
ぐりゅるるるる。
私のお腹から、地響きのような豪快な音が鳴る。
「お腹空いた? 昼にする?」
「……う、うん」
最悪! 普通、デート中にお腹鳴らす?
気の抜けた自分をぶん殴ってやりたい。マジで。
「どこがいい?」
「えーと。あ、ここがいいな」
私が指差したのは一つのイタリアンレストラン。
ピザにパスタにデザートが付いて安い、学生の味方のようかお店だ。
「うん、入ろう」
私達がお店に入ると、店員さんにより席に案内される。
そこは窓際のテーブル席で目の前には桜の木があり、丁度満開の頃だった。
「何がいい?」
そう聞きながら私はメニュー表を出して、大和に見せる。
しかし返事は、「絵美が好きなので良いよ」の一言。
まただ。大和は自分から何も選ぼうとしない。
デートの日付も、どこに行くかも、何をするのかも食べるかも、全て私が決めて良いって言ってくる。
勿論、優しさだと分かっているけどなんか、なんと言うか物足りない。
そう思いながら、私はこれで良いかを大和に確認しながら注文する。
料理がくるまでする話も、学校のいつもの話や面白かったSNSの話ばかり。
変わり映えない時間に、いささか退屈を覚える今日この頃。
はあー。出会ったあの頃に戻りたい。
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