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あなたと私
初めから出会っていなければ、こんな思いをしなかった。
初めからあなたを好きにならなければ、こんなに悲しくて辛い思いをしなかった。
「好きな人がいるんだ」
「どういう事?」
「ごめん。結婚式のキャンセル料は、全額俺が払う。それに、愛花梨に渡した婚約指輪も返さなくていいから……」
「そんな問題じゃないよね?」
「ごめん」
婚約者でありながら、私との5年の歳月をあなたは好きな人が出来たの一言で終わらせようとした。
それで、許されると思っているの?
「俺には、謝るしか出来ない。本当にごめん」
「どんな人?」
「えっ?」
「婚約者なんだから、知る権利ぐらいあるよね」
「愛花梨とは違って俺がいなくちゃ駄目な人なんだ」
はぁ?って言いそうになったのを堪えた。
私とは違ってって何?
私がいつあなたを必要じゃないって言ったの?
「ごめん」
「もういい」
「本当にごめん」
「謝ったってどうにもならないでしょ?気持ちが戻ってくるわけじゃないんだから」
「ごめん」
ごめん
ごめん
ごめん
ごめん
ごめん
あの日、私は何度もあなたに謝られた。
許すとか許さないとかじゃなく。
ただ
ただ
呆れた。
あれから、二週間。
私は、頭の中からあなたを消していた。
なのに、潜在意識はあなたをまだ愛しているようだ。
「あんな男の夢を見るなんて……。最悪」
カーテンを開けて、窓の外に広がる青空を見つめながら深呼吸する。
今日からまた消そう。
さよなら、あなた。
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