お坊ちゃん

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 私の家の玄関は、四十三段の階段の上にある。 その日、私が帰宅すると、階段の上に熊のような大男が立っていた。私はギョッとしたが、家に入るためには熊男の横を通らなければならない。一段一段近づくにつれ、男の顔が見えてくる。薄くなった頭皮。蒸気で真っ白に曇ったメガネ。なぜか肩で息を切らせ、滝のような汗を流している。気がつくと、私は叫んでいた。 「ぎょえええ~~~~~~~っっっ!!!」 「ななな、何ぃぃぃ?」  私が奇声を発したので、相手もびっくりしてのけぞってしまった。  それは、今年の4月に松山支局から転勤してきた軽鴨(かるがも)課長であった。
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