思い出断捨離

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「おまたせーっ」 お気に入りの薄いピンクのトートバッグを肩から下げた妻が現れると、遅いよーと頬を膨らませながらも嬉しそうに後部座席に収まる息子。 きっちりとセットされた茶色のショートボブ。メイクも決まっている。 行き先が動物園ということで足元にはスニーカー。 服装は動きやすいラフな格好でまとめられている。 助手席に座った妻は早速、◎◎動物園へのルートをセットするため、カーナビを操作する。 「☆☆株式会社※※工場って。こんなのばっか。なに?この地味な検索履歴は」 あっぶねぇ。 間に合ってよかったー。 気付かれずに済んで良かったが心の動揺を悟られてはいけない。 「仕方ないだろ。仕事でもこの車使ってるんだから。営業で出向く先を登録してあるんだよ」 「◎◎動物園っと」 俺の言い訳は妻の耳を華麗にスルーしていく。 「それじゃー、出発ー!」 息子の元気な声に合わせて車を発進させる。 最悪の事態は避けられたと安堵しハンドルを握りなおす。 すると、不意に妻の低い声が車内に響いた。 「ねえ、なに?この長い髪の毛」 了
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