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超能力や霊能力のようなオカルト。さらにはタイムトラベルのようなSF。わたしは小さい頃からそれらに憧れ、この世界ではない別の世界に行ってみたいと思っていた。
存在を信じている一方で、存在しないかも知れないという一抹の不安もあった。だけどそれは昔の話だ。
「天音、何一人でたそがれてんの」
イタリアンの店の一角で窓の外を眺めて考え事をしていると、聞き慣れた声が聞こえてきた。
明るめのブラウンに染めたショートにワインレッドのフレームの眼鏡が似合っている。彼女はわたしの前に座ると、眼鏡の位置をくいっと直した。
「あんたが遅刻するから、ちょっと昔の事を思い出してたんだよ」
「ごめんて。帰り際に教授に捕まっちゃってさ」
そう言いながら気だるそうな顔をするのは、わたしの幼馴染にして親友の佐伯理絵。親同士が大親友だったこともあり、彼女とは生まれた時から一緒にいた。つまり、もう二十三年以上の付き合いになるわけだ。
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