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「……ここは?」 「春の桜舞島だよ」  理絵は目をこすりながら立ち上がった。二人で街を見下ろすと、優しい風が吹いて、桜の花びらがはらはらと舞い散る。 「綺麗だね」 「この風景は日本一だと思うよ」  この場所はわたしのおばあちゃんがすむ島。理絵とも何度か訪れたことのある、いわくつきの島でもある。 「今見てるこの景色は幻なんだよね」 「現実世界とは違うけど、わたしたちにとってはホンモノだよ。体の感覚もそのままでしょ」 「鈴井さんも言ってたけど、仮想空間と何が違うの?」 「ここは、わたしの夢の中なんだよ」  わたしには人並み外れた記憶力がある。覚えたことは基本的に二度と忘れないし、それを活かして脳内に世界を構築することも出来る。理絵のように超能力じみた力ではないが、イセカイを追い求めてきたわたしには神に授かったともいえる能力だ。  ねんねこイヤーのメインの機能は、意識を繋いで情報を共有すること。今わたしたちがいるのは、わたしが構築した桜舞島なのだ。
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