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「へえ、これがいつも天音が見てる世界なわけね。本当に現実みたい」
理絵は珍しそうに辺りを見渡し、あちこちつついて確かめている。
「言ったでしょ、ここにいるわたしたちにとっては、全部ホンモノなの」
「でも、確かにリアルだけど、なんだか違和感があるんだよね。わたしが知ってる桜舞島とどこか違うというか」
「そりゃそうでしょ。同じものを見ても、感じ方は人それぞれなんだから。人によって色の見え方が違うっていう話、聞いたことない?」
「そうか、桜の花の色だ。わたしにはもう少し派手目の色の印象があるもん」
この世界はわたしの五感を通して作られたもの。理絵からすれば、他人が描いた絵を見て、感性の差を感じるのと同じことが起こるわけだ。
「ところで、鈴井さんはどこに行ったの?」
「近くに気配は感じるんだけどね」
「そういうの、わかるんだ」
「わたしが作った世界だもの」
わたしたちは、ひとまず鈴井さんを探して島の中を歩き始めた。
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