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 閉じ込めたはいいものの、この影は一体なんなのか。わたしの管理から外れているということは、理絵と同じく外から現れた存在ということ。そんな存在がいるとしたら、あの人しかいないが。 「……まさか、鈴井さん?」  わたしが聞くと、その影は何度もうなずいた。思った通りだった。この世界で自分をイメージするには、日頃から想像力を鍛えておく必要がある。霊的な存在を見続けてきた理絵は得意だろうが、一般人の鈴井さんには難しいはず。 「これ、本当に鈴井さんなの? 随分とアレな姿だけど」  わたしの後ろに隠れていた理絵が、恐る恐る檻に近づく。 「タスケテ……」 「わあっ」  鈴井さんが檻から手を伸ばすと、理絵は怖がってまた隠れてしまった。このままだとかわいそうなので、鈴井さんがイメージしやすいように、手助けすることにした。 「今から鈴井さんのダミーを作りますから、よく見てくださいね」  わたしは、記憶の中にある鈴井さんの姿を思い返した。顔立ちはどことなく猫っぽく、大きい目に対して、口は小さめ。本人はコンプレックスだと言っていたが、そこは今はどうでもいい。背はわたしと同じくらい。痩せ型で、いつもラフなブラウスを着ている。  紡ぎ上げたイメージが形となって、目の前に実体化する。 「本物の鈴井さんだ」  理絵が言うと、檻の中の彼女は全身を使って全力で否定した。
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