7人が本棚に入れています
本棚に追加
「ダミーをよく見て、想像を膨らませてください」
黒くうごめいていた彼女の姿が、少しずつ変化していく。この世界に留まるには、イメージが大事ということだ。異物としか言いようのなかった彼女が、やっと人間らしい形に近づいてきた。
ぱっちりお目々にバサバサのまつ毛。ふっくらとした形の良い唇。そしてその髪は、CMでしかお目にかからないような、ツヤツヤのストレートロング。
「……誰?」
理絵が素早く突っ込んだ。
「鈴井茜、十八歳です」
鈴井さんはドヤ顔で胸を張る。その胸もちょっと盛っているような気がする。まさかそっち方面に想像力を働かせるとは。
「へえ、こんなことも出来るんだ」
「原理的には可能だよ。わたしはあまりやったことないけど」
この世界で姿を変えても、誰かがいるわけでもないし、実感がわかないのだ。でも、今後はこういう遊び方も出来るわけだ。
「あのう、とりあえずここから出してもらえると」
「ああ、ごめんなさい」
わたしは指をパチンと鳴らして、鈴井さんを閉じ込めていた檻を消し去った。
最初のコメントを投稿しよう!