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「ダミーをよく見て、想像を膨らませてください」  黒くうごめいていた彼女の姿が、少しずつ変化していく。この世界に留まるには、イメージが大事ということだ。異物としか言いようのなかった彼女が、やっと人間らしい形に近づいてきた。  ぱっちりお目々にバサバサのまつ毛。ふっくらとした形の良い唇。そしてその髪は、CMでしかお目にかからないような、ツヤツヤのストレートロング。 「……誰?」  理絵が素早く突っ込んだ。 「鈴井茜、十八歳です」  鈴井さんはドヤ顔で胸を張る。その胸もちょっと盛っているような気がする。まさかそっち方面に想像力を働かせるとは。 「へえ、こんなことも出来るんだ」 「原理的には可能だよ。わたしはあまりやったことないけど」  この世界で姿を変えても、誰かがいるわけでもないし、実感がわかないのだ。でも、今後はこういう遊び方も出来るわけだ。 「あのう、とりあえずここから出してもらえると」 「ああ、ごめんなさい」  わたしは指をパチンと鳴らして、鈴井さんを閉じ込めていた檻を消し去った。
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