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「これで実験の第一段階は成功かな。……この人が本当に鈴井さんなら」
隣では、自称鈴井さんが、わたしが作った手鏡をルンルンな笑顔で覗いていた。この謎の美女が鈴井さんかどうか、証明する手段はないわけだが。
「ひどいな、天音ちゃん。どこからどう見てもわたしでしょ」
「どの口が言うんですか」
言動を見ていれば鈴井さんだとすぐわかる。なんだか残念な美人というか、違和感が凄い。そして、見た目だけでは本人かどうかわからないのは、理絵も例外ではない。
「あんたは本物よね?」
「え、わたし? わたしはわたしだよ」
改めて理絵の顔を観察する。長年見てきた親友の顔。わたしは彼女のことならなんでもわかる。
「惜しいな、再現度九十五パーセントってところかな。ほくろの数が二つ足らないし、耳の形がちょっと雑」
「やかましいわ。あんたみたいに何でも記憶してるわけじゃないんだよ」
不思議なもので、話していると、その人の内側にある何かが伝わってくる。それだけで本人だと確信が持てるのだ。
『上手く言ったようだね』
唐突に天から神々しい声がした。この声は、三城博士だ。
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