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『佐伯君、率直な感想を聞かせて欲しい。今日体験してもらった世界、どう感じるかな』
「最初は違和感がありましたけど、慣れると普段とほとんど変わらないですね。テーマパークに来ている気分ですよ」
理絵は鈴井さんのヒゲをつつきながら答えた。
『君は普段から特殊なものが見えるだろう。その世界でも同じなのかな』
「さあ、見えると言っても、普通に見るのことの延長みたいな感じですからね。もし、ここに何かいれば見えるのかも知れませんけど」
『なるほど。三浦君、霊体を生成することは出来るか』
「いや、流石にそれは経験ないですけども」
博士は時々、真面目にとんでもないことを言い出すことがある。わたしの中の定義では、霊とは存在しているのに認知出来ないもの。霊体が肉体を持たない精神のことだとすれば、今の我々も似たようなものだが。
試しに、わたしは理絵に悟られないように、鈴井さんの頭上に透明の天使の輪っかを作ってみた。すると、理絵はすぐに視線を上げて目を丸くした。
「鈴井さん、もしかしてお亡くなりになったりしました?」
「なになに、怖い。急に変なこと聞かないでよ。わたしは後八十年は生きるつもりですよ」
わたしにも見えていないのに、理絵には見えている。そこにあるとわたしが認知しただけで、それを理絵が感知したわけだ。なんだか哲学みたいになってきた。
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