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 布団から起き上がると、隣の鈴井さんはまだいびきをかいていた。世界を構築していたわたしが起きた時点で、これはただの居眠りだ。 「頭がちょっとぐるぐるするね」  理絵の方は起きていて、こめかみを押さえながら辛そうな顔をしている。 「二人ともご苦労様。貴重な実験になったよ」  ねぎらいの言葉とともに、博士がわたしたちの頭からねんねこイヤーを回収した。 「結局、何が目的だったんですか?」  理絵が聞くと、博士は右手の人差し指を伸ばしてみせた。 「三浦君の精神を複数人で共有出来るかを確認したかったのが一つ。もう一つは、君の力の原理の解明だ。それについては、新しい発見が出来た」 「そうなんですか?」  理絵が博士とわたしの顔を見比べる。夢の世界で理絵が感知した天使の輪は、いわば設定だけがあるデータのようなもの。本来なら見えるはずのないものだ。  この事は理絵には内緒で博士に伝えてある。理絵に話すことで意識されてしまうと、正しい結果が得られなくなるかも知れないからだ。  そしてこれは、現実世界では起こらない。試しに理絵の目の前に見えない人魂を想い浮かべてみたが、反応する様子はないからだ。 「それにしても鈴井さん、ぐっすりですね」 「寝かしておくよ。この実験は脳への負担がかかるから、疲れたのだろう」  そう言って博士は黒いペンを取り出すと、鈴井さんの顔に猫ひげを書いた。
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