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 三城博士には壮大な仮説がある。この世界に生きるものたちは別次元に精神があって、肉体を遠隔操作しているというのだ。これは二元論と呼ばれる概念が元になるらしい。  わたしは自分の記憶力に気づいてから、頭の中に世界を構築する実験を繰り返した。それは作り出した世界の情報を脳内に記録(セーブ)している感覚だった。しかし博士の仮説が正しいとすると、肉体を離れたわたしの記憶は、いったいどこにいくのだろう。 「ようこそ〝ルミナス〟へ。魔王リエ」 「誰が魔王だ」  わたしの目の前で、黒装束に身を包んだ理絵がわたしを睨んでいた。その頭には水牛のような角、背中には大型の蝙蝠の翼が生えている。昔、VRで理絵に魔王のコスプレをさせたことがあったが、やはりよく似合う。 「何なのよ、ここは」 「わたしが作った実験世界のひとつだよ」 「なんか、人がいっぱいいるんだけど」 「みんなルミナスの住人だよ」  わたしが最初に作り出したイセカイ、〝ルミナス〟。中世をモチーフとした世界で、ちゃんと住人も存在している。現在のところ、その数は十八人。 「ここでは役になりきってもらうからね。あんたは、今から魔法使いの頂点に君臨する大魔導師〝漆黒のリエ〟。そしてわたしは、リエと双璧をなす大魔導師〝月白(げっぱく)のアマネ〟」 「……悪い夢でも見てるみたいだよ」  高校生の頃に作り出したシナリオだが、こうして本物の理絵を迎える日が来ようとは。なんだかワクワクしてきた。
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