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エヴァンはこの街の全てを統括している。彼なら鈴井さんのことも知っているはずだ。
「ねえ、もう一人ここに来てるはずなんだけど、知らない?」
「ご主人様の少し前においでになりましたよ。少々奇抜なお姿でしたので、クラストが尋問しておりましたが」
エヴァンは涼しい顔でそう答えた。いきなり不審者扱いされるとは、今回の鈴井さんはどんな格好をしているのやら。
「今は役所の客室でお待ちいただいておりますので、ご案内しましょう」
そう言ってエヴァンは道先の建物を示した。ここの街を管理するために設けた建物で、この街の中心だ。その周りに住人たちの家が円状に並ぶ作りになっている。要するにわたしにとっては街作りのゲームみたいなものだ。
「あの人も天音が動かしてるんだよね?」
エヴァンの後に続きながら、理絵がわたしに耳打ちした。
「デザインしたのはわたしだけど、言動は彼の意思だよ。ほら、夢に出てくる人だってそうでしょ」
「そっ、そうなんだ」
わたしが答えると、理絵はもじもじし始めた。エヴァンは漫画とかに登場する完璧執事がコンセプト。理絵の好みに刺さるのだろう。
役所の中に入り、ロビーを横切って応接室に案内される。
「こちらでございます」
「……誰?」
理絵が素早く突っ込んだ。中でお菓子を貪っていたのは、ルミナスの世界観に似つかわしくない、着物姿の美女だった。
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