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広場から伸びる遊歩道を行くと、畑が広がる地帯に出る。住人たちのほとんどは、ここで作物を育てて生活をしている。
「あれま、ご主人様。今日は随分と派手なお姿で」
畑仕事をしていた麦わら帽子の男が、わたしに気づいて話しかけてきた。
「カナン、丁度よかった。白い着物の人のことを聞きたいんだけど」
「ああ、あの女の子のことだべか」
カナンは首からかけていたタオルで汗を拭いた。それを見た理絵がエヴァンのときと同じように挙動不審になっている。カナンは田舎者口調なだけで、見た目は色黒のイケメンだからだ。
「オラのことをじっと見てるから、野良仕事をやってみたいのかと思ったんだけども。声かけても、返事せずに突っ立っているだけでね」
「その子、いくつくらいに見えた?」
「十五、六くらいかねえ。長い黒髪で着物なんか着てるもんだから、最初はカカシかと思ったっぺよ」
鈴井さんの例もあるので、見た目が本人と必ずしも同じとは限らないが、手がかりにはなるだろう。
「ありがとう。他も回ってみるよ」
「帰りに寄ってくんろ。いいかぼちゃが出来たでな」
手を振るカナンと別れると、理絵が肩をつついてきた。
「なんかイケメンばっかりだけど、天音の趣味?」
「どっちかというと、カナンたちの趣味だよ。わたしは役割を与えただけで、見た目とかは任せたからね」
彼らはAIに近い存在で、自ら考え行動する。実はその原理はわたしにも把握しきれていないのだが。
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