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畑を抜けた先には果樹園がある。リンゴが実った木が沢山立ち並んでいる。
「天音、あれ」
理絵が声を上げ、前を指差した。木の陰からこちらを見ている女の子がいる。長い髪と白い着物の袖が見えている。少なくともわたしが把握している住人ではない。
わたしたちが近づくと、後ろの木の陰へと逃げてはこちらをうかがうことを繰り返す。
「理絵、あんたが怖いのかも。ちょっと待っててくれない?」
「なんでよ」
「その姿、どう見ても正義側の人間じゃないでしょ」
「好きでこんな格好してるわけじゃないんですけど」
角の生えた黒装束の女が近づいてきたら、誰だって怖い。二人を待たせて、わたしはゆっくりと女の子の方へ歩み寄った。
「こんにちは。あなた、どうやってここに来たの? わたしはここの管理人の天音といいます」
わたしが聞くと、彼女は最初は驚いた顔をしていた。管理人と名乗ったことに反応したようだった。
「ここに外から人が来るのは初めてなんだ。よかったら話を聞かせてくれない?」
「……ここはあなたの夢なんですか?」
彼女はポツリとつぶやくように聞いてきた。
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