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彼女はこの世界を〝夢〟と表現した。ここがどういうものなのかをわかっているということだ。
「確かに、夢の世界とも呼べなくはないね。記憶の中に作った箱庭みたいなものかな」
そう答えると、彼女はぱっと表情を明るくして、木の陰から出てきた。
「わたし、いつもこうして誰かの夢の中を旅行してるんです。こんなに綺麗で繊細な世界は初めてで、びっくりしました」
彼女はさらりと言ってのけた。他人の記憶の共有が原理的に可能なことは三城博士が既に証明している。身近には霊能者がいるぐらいだし、そういう力を持つ人がいても不思議ではない。
「夢の世界の旅行者か。なんだか格好良いね」
わたしが褒めると、彼女は嬉しそうにはにかんだ。おそらく彼女もわたしや理絵と同じ種類の人間なのだろう。
「この世界、すごいですね。現実と何も変わらないし、みんなわたしが見えているし」
「わたしはここをイセカイと認識しているからね。改めまして、イセカイ〝ルミナス〟へようこそ」
わたしが能力に気づいて六年あまり。まさか理絵たち以外の訪問者が現れるとは。これは面白くなってきた。
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