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「それにしても綺麗な着物だね」
わたしはかなめちゃんが着ている白い着物に目を留めた。細かい花模様の刺繍が施されていて、見るからに高そうな代物だ。
「現実だと気軽に着て歩けないですから。ここなら汚しても平気ですし」
彼女は、はにかみながら答えた。鈴井さんのド派手な着物と比較すると、質の違いが一目瞭然だ。
「なんだい、天音ちゃん」
鈴井さんがわたしの視線に目ざとく反応してくる。
「いや、鈴井さんのは派手だなと」
「成人式用なんだから、目立ってナンボでしょ。レンタル料だってお高かったんだよ」
「わたしはかなめちゃんの着物がいいな」
再現度にもよるのだろうが、鈴井さんの着物がやたら安っぽく見えてきた。
「わたしの着物は、うちのお店に置いてある手描き友禅です」
「もしかして、着物関係のお家なの?」
「はい。桜舞島にある呉服屋です」
そういえば、島に住むおばあちゃんと雰囲気の良い呉服屋さんに寄った記憶がある。あの店の娘さんだったか。彼女に特殊な力があるのは、やはり島の血のようだ。
「ちなみに、プロから見てわたしの着物はどう? 再現度には自信があるんだけど」
鈴井さんがくるりと回って赤い着物を翻すと、ポーズを決めた。
「プリントものですね。質は、中の下の……中ぐらいでしょうか」
「絶妙に微妙だな。結局平均より悪いってことでしょ」
かなめちゃんが苦笑いをしている。実際は下の上の下ぐらいと見た。
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