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「よくぞ聞いてくれたね、ワトソン君。それこそ、三城ラボの技術の粋を尽くしたデバイス。その名も〝ねんねこイヤー〟だよ」
「ネーミング」
「それをつけて眠りにつくと、あらかじめ設定したイセカイを体験出来るスグレモノ」
「……ヘースゴイ。でも、お高いんでしょう?」
「開発費でいうと、ざっと三十億円程」
「高すぎるわっ」
理絵は慌ててカチューシャから手を離す。
「今日は理絵に試用して欲しいんだ。人類史上初だよ。理絵が世界で初めてイセカイを体験する人類になるんだよ。光栄に思いたまえ」
「いやいやいや、そんなの責任取れないからね」
「お金のことなら心配無用。そんなことより、ウチに必要なのは、質の良い実験台だから」
「発言が色々とマッド過ぎる」
わたしは世界的科学者、三城玲奈博士が管理する研究所で働いている。彼女は若くして様々な発明を生み出してきた。
振るだけでゆで卵を作る機械から、物体を遠方に転送する装置、さらにはタイムマシンまで。その守備範囲は普通の価値観には収まらない。ほとんどの発明は、まだ世間一般には公表出来ないような極秘技術が使われているのが残念なところだ。
わたしは高校生の頃に彼女に出会い、この人の元で働くのだと確信していた。博士なら万物の全てを解析し、自在に操れるようになる。その先には、わたしが求めるイセカイが存在すると。
そして今、それが実現しようとしているのだ。
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