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「ねえ、ここ寒すぎるよ。もうちょっと暖かく出来ないの」  理絵がわたしに抱きついて暖を取りながら言った。 「ここはルミナスと違って、現実世界のコピーだからね」 「理絵ちゃん、諦めなさい。南極に住むということは即ちそういう事だから」 「わたし、住むつもりはありませんが」  鈴井さんは達観した様子で仁王立ちしている。通算滞在日数が年を超える人は一味違う。 「せっかくだから、案内しようか。うちの観測所が近くにあるから」  まるで地元のように言うと、鈴井さんは白い大地を先導し始めた。  見渡す限りに雪と氷しかない世界は、どこも同じに見えるが、鈴井さんは慣れている様子で、どんどん進んでいく。そのうち、空に砲身を向けた大砲のような装置が見えてくる。三城博士の発明品の〝ウェザーコントローラー〟だ。その向こうには六角形の無骨な建物が立っている。 「さあ、遠慮せずどうぞ」  もはや我が家のように建物に入る鈴井さんに続く。中は普通に暖かく、鈴井さんは上着を脱ぐとキッチンでお茶を入れてくれた。 「はあ、生き返る」  カップを両手で持ち、理絵が幸せそうな声を上げる。外の寒さも、お茶の温かさも、ある意味気のせいとも言える。専門家のお墨付きをもらったこの第二南極だが、そのデータの実体はどこにあるのか。それを突き止める方法はないだろうか。
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