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 天体をシミュレートするということは、宇宙をデータ化するということだ。さすがにそんな膨大なデータを保持出来るのか、わたしにはまだ自信がなかった。 「天音ちゃん、ここには生き物もいないの?」 「南極のスキャンデータからは動物の情報は取り除かれていましたからね」 「なんだ。星空も見えず、ペンギンズもいないとなると、ただ寒いだけの場所だね」  鈴井さんがつまらなそうに空を見上げる。この世界は南極の地形データに大気系のシミュレート情報を加えたもの。ルミナスと同じ要領で、自立型の住民や動物を住まわせることは出来るかも知れない。  ルミナスの住民は、今こうしている間も、主に農業に勤しみながら生活している。何度も訪れることが出来る夢のようなものだと考えて、かつては夢幻世界と呼んでいた。しかし、夢ではあり得ないことがいくつも起こったのだ。  普通の夢は、脳内の記憶の断片によって引き起こされるもの。コントロールすることは出来ず、支離滅裂なことが多い。一方で、ルミナスの住民の行動は時系列的にも完璧に連続性が保たれている。いくらわたしが人間コンピューターばりに記憶力を発揮出来るとしても、ちょっと違和感があったのだ。  この世界には霊的なものが存在することは、この目で確かめている。つまり、物理を超えた世界に情報が存在出来るということ。そして、わたしの能力の本質は、理絵と同じく霊的な世界に干渉する力なのだ。 「……つまり南極(ここ)は、霊界と呼んでもいいわけか」 「なに急に。怖いんだけど」  わたしのつぶやきを聞いた理絵が眉をひそめた。
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