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 現実世界に戻ったわたしは、組み立てた仮説を三城博士に話した。 「膨大な南極のデータの再現とルミナスの自律性は、わたしの脳内だけでは処理出来ないというのが、わたしの結論です」 「なるほど。やはり肉体外に記憶が保持されていて、君はそこに自由にアクセス出来るということだな」 「そう、なるんですかね」  正直なところ、自分では自覚がない。わたしにとっては出来て当たり前のことで、複雑な原理までは理解していないのだ。 「これで研究がさらに進むぞ。肉体がデバイスとしての機能を持っていることが証明されたんだからな」  博士は鈴井さんの頭から〝ねんねこイヤー〟を回収しながら言った。普段はあまり感情を表に出さない博士だが、かなり嬉しそうに見える。 「あのう、何がわかったんですか? わたしには何が何やら」  横で聞いていた理絵が、遠慮がちに手を挙げた。 「君たちの心はもっと高次元な場所にあるということだよ」 「高次元?」  理絵が首を傾げる。博士の研究が正しかったということは、いよいよあの夢の発明品が完成に近づくことを意味するのだ。
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