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 今日の実験は、わたしと鈴井さんのアマカネコンビで行う。このシステムは最高機密に該当するため、一応部外者である理絵は参加させられないということだ。とはいえ、博士は高校時代のわたしに、このシステムを体験させたことがあるのだが。 「それでは始めよう。リラックスしてくれ」  博士がコンソールを操作し、椅子の背が倒される。満天の星を見ているうちに、少しずつ身体の感覚が薄らいでいく。そのうち浮遊感に包まれて、五感が完全にシャットアウトされる。  完全な無の世界。何度か体験したが、この瞬間だけは少し怖い。ルミナスを訪れるときは擬似的な肉体があるが、今は意識のみで存在している状態。少しだけ、死後の世界を想起させられるのだ。  しばらく暗闇の中にいると、前方から光が迫ってくる。わたしはその中に飲み込まれ、一瞬だけ意識を失った。  次に目を覚ますと、眩しい青空が広がっていた。わたしはどこかの草むらに寝そべっているらしい。体を起こすと、見渡す限りどこまでも緑一色だ。例のごとく鈴井さんの姿が見当たらないので、わたしはひとまず彼女を探して歩き始めた。
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