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「あらためて、よろしく頼むよ、佐伯君。君には期待しているんだ」 「は、はあ」  博士が理絵の手をがっしりと取り、熱い眼差しを送っている。  理絵がこうしてウチに協力するのは初めてではない。彼女は普通の人間にはない特殊能力を持っているからだ。 「ところで、眼鏡の調子はどうかな?」 「はい、お陰で普段通りに生活出来るようになりました」  理絵には、いわゆる霊的なものが見えてしまう力がある。最近になってその力が強まりすぎて生活にも支障が出てきたというので、相談を受けたのだ。 「不具合があったら言って欲しい。君は大切な協力者だからね」 「あはは」  わたしは苦笑いしている理絵を肘でつついた。 「いっそのこと、ウチで働けばいいじゃん」 「またその話。わたしは大井教授のところで研究をしたいの。その方がお互いメリットあるでしょ」  大井教授とは超心理学の権威で、理絵は彼の下で研究を続けているのだ。 「まあ、理絵が心霊のスペシャリストになるのには、反対しないけどさ」 「心霊じゃなくて、超心理学だって。そこのところ間違えないように」  いまいち違いがわからなかったが、理絵が鼻息を荒くして睨むので突っ込むのはやめておいた。
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